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研究者総覧「情報知」

メディア科学専攻

氏 名
長尾 確(ながお かたし)
講座等
知能メディア工学講座
職 名
教授
学 位
博士(工学)
研究分野
デジタルコンテンツ技術 / 自然言語処理 / エージェント技術

研究内容

知的コンテンツと知的エージェントさらに移動体とロボット
■研究の概要■
メディア・コンテンツ・エージェント技術:Webページやビデオや音楽など、現在ではさまざまなコンテンツをインターネットや携帯電話を利用して視聴できる。これらのコンテンツをより賢く使うために、コンテンツの意味を理解し、柔軟に活用する必要がある。そのために、テキストやビデオなどの複数のメディア情報を統合的に解析する技術、機械と人間が協力してコンテンツの意味を明確にする技術、人間の行う知的な処理を肩代わりするためのエージェントやロボット技術などの研究を行っている。
■研究テーマ■
(1) セマンティック・トランスコーディング
コンテンツを、より視聴者の都合のよいものにするために、外国語を母国語に翻訳したり、難しい言葉をやさしく言い換えたり、長い内容を短く要約したり、ビデオの内容を写真と文字で表現したり、楽曲のサビの部分だけを繰り返し聴けるようにしたり、など、さまざまな変換を実現する技術を研究・開発している。
そのために、コンテンツに含まれるテキスト要素に言語的なアノテーション(補足情報)を加え、テキストの意味を明確にする仕組みを開発した。また、ビデオの内容を解析して、半自動的にアノテーションを作成するシステムを開発した。このシステムは同時にビデオのシーンの変わり目を認識して、シーンに関するアノテーション作成を支援する。さらに、音楽に対するアノテーション(楽曲の構造や属性)作成を支援する仕組みも開発している。
(2) ディスカッション・マイニング
オフライン(つまり対面式)の会議風景を記録すると同時に、会議に関連するメタデータを会議中に作成する仕組みを開発し実践している。この場合のメタデータには、発表者の用いたスライドの内容とそれをスクリーンに表示した時間、発言者のIDとその発言時間、発言間の関係(前の発言を受けているかどうか。受けている場合は、肯定的か否定的か、など)、発言内容に含まれるキーワード、などが含まれる。
このメタデータをうまく使うと、会議からさまざまな知識が獲得できるだろう。たとえば、ある提案に関する参加者の意見の違いから、その提案の持つ多様な側面が推論されたり、異なる会議で似たような質問が繰り返されたときに、その回答と合わせたFAQが作成されたり、議論が発散した場合は、その元になった発言が何か新しいアイディアを含んでいるかも知れないので、ブレインストーミングの題材として利用されたりする。会議は人間活動の中でも特に知的な要素が高いので、その内容を機械によって利用可能にすることで、人間の創造性を強化できることはほぼ間違いがないだろう。
(3) 個人用知的移動体
人間の行きたいところに適切に案内してくれる賢い乗り物を研究開発している。この乗り物は、情報通信機能を持ち、人間の認識能力を拡張することができる。複数の乗り物はお互いの存在を知らせて、人間に注意を促すためにネットワークを構成する。通信によって、お互いの位置・速度・進行方向・移動履歴・目的地などを早めに教え合うことができれば、衝突や接触を回避できるだけでなく、目に見えないところの状況を人間に知らせる有力な手段になる。
(4) インタフェース・ロボット
人間の声からその人の意図を認識して応答するロボットの研究開発を行っている。このロボットはネットワークに接続し、アノテーション付きのコンテンツを取得し人間に効果的に提示する。
■今後の展開■
知的コンテンツと知的エージェントは、近未来の情報環境を高度化するための本質的な技術である。まず、オンラインの情報をアノテーションによって知的コンテンツとする仕組みを確立し、推論能力を持ったエージェントによってコンテンツを知識として利用する技術を実用化する。これはさまざまな領域に適用できる。また、個人用知的移動体は、新たなコンピューティングパラダイムとしての搭乗型(マウンタブル)コンピューティングの具体例であり、物理的・情報的バリアフリー化に大いに貢献するだろう。
セマンティック・トランスコーディングの概念図

セマンティック・トランスコーディングの概念図

経歴

  • 1985年東京工業大学工学部卒業
  • 87年同大学大学院総合理工学研究科システム科学専攻修士課程修了。87年日本アイ・ビー・エム株式会社東京基礎研究所研究員。91年株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所研究員。96年米国イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校客員研究員。99年日本アイ・ビー・エム株式会社東京基礎研究所研究員。
  • 01年名古屋大学助教授。02年同大学教授。03年から現職。

所属学会

  • 情報処理学会
  • 人工知能学会
  • 言語処理学会
  • IEEE

主要論文・著書

  1. Digital Content Annotation and Transcoding. Artech House Publishers (2003).
  2. Semantic Annotation and Transcoding: Making Web Content More Accessible. IEEE MultiMedia. Vol.8, No.2, pp.69-81 (2001).
  3. Video Scene Annotation Based on Web Social Activities. IEEE MultiMedia. Vol.15, No.3, pp.22-32 (2008).
  4. エージェントテクノロジー最前線,共立出版 (2000).