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研究者総覧「情報知」

メディア科学専攻

氏 名
齋藤 洋典(さいとう ひろふみ)
講座等
認知情報論講座
職 名
教授
学 位
文学博士
研究分野
脳・意味 / 言語・記憶・感情 / 行為・支援

研究内容

人の認知と行為の意味を探る:「わかること」と「できること」、両者の統合と支援に向けて
■研究の概要■
脳はいかにして「意味」を理解しているのか? その仕組みを解き明かすために、人の認知・記憶・感情・行為などについて多角的な観点から研究を進める。人の多様な情報処理活動の過程を、認知心理学の手法や、脳波や脳のイメージング技法などを利用して、認知科学的なアプローチで解明する。 最近は、人の知覚、記憶、言語、思考、注意や意識などの高次精神活動と、それらの活動を支える身体運動・動作・行為・行動などの身体活動との相互作用の解明を目指す。例えば、言語による精神活動とジェスチャーなどの身体活動とを「つなぐ」知識処理とその脳内「表現」の解明に取り組む。
人の「想い」は表現されても、伝わらなければ「意味」を失い、また伝わっても「行動」に移されなければ、その「使命」をまっとうすることができない。
人々の生活における認知的「支援」をどのようにすれば実現できるのかを、実践的に研究することも、わたしたちの重要な使命だと考える。
■研究テーマ■
(1) 記憶活動:記憶活動は人の心的活動を支える基礎である。記憶は、単に過去の情報の総和ではない。それは、現在の学習活動と未来の創造活動の根源である。
(2) 感情活動:感情活動は人の知的活動と双翼をなす。感情を伴わない記憶を扱うだけでは、人の知的活動の十全な理解は得られない。
(3) 身体活動:行為は身体を駆使して行われ、その発現は、記憶、感情と無縁ではあり得ず、記憶と感情と行為は。不可分の関係を成す。
(4) 意味処理活動:言語・感情・行為は脳内にそれらの活動を支える個別領野をもつ。しかしそれらの「相互作用」を無視して、活動の「意味」や「意図」を理解することはできない。意味はその変化を含む枠組みからダイナミックに捉えられなければならない
■研究事例■
自然言語処理:単語認知と心的辞書、二言語併用者の心的辞書。
自伝的記憶:感情と想起、共感と理解、快不快感情と欝。
コミュニケーション:言語と行為、発話とジェスチャーの産出と理解。
イメージング:近赤外分光法を用いた脳と言語・感情・行為に関する総合的研究、手と脳、観察学習と模倣学習、学習における自己と他者の関わり。
■今後の展開■
脳・言語・記憶・感情・行為を基本テーマとして、人の意味処理活動の解明を目指す。
具体的には、コミュニケーション事態における発話と行為における「いいよどみ」や「やりよどみ」に注目し、発話とジェスチャーのデータベース化を進めるともに、心理実験とイメージング技法を駆使し、実践的状況におけるコミュニケーション支援システムの実用化を推進する。
「手と脳」の関わりを近赤外線分光法で探る 脳の賦活状態を計測するイメージング装置を用いた介護の実験風景

「手と脳」の関わりを近赤外線分光法で探る 脳の賦活状態を計測するイメージング装置を用いた介護の実験風景

経歴

  • 1981年 関西学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士課程後期課程
  • 1996年 名古屋大学大学院人間情報学研究科 教授
  • 2003年 同大学大学院情報科学研究科メディア科学専攻 教授(認知情報論講座)
  • 1996年マックスプランク研究所(心理言語学);2000年~2001年 コロラド大学(認知科学) 客員研究員

所属学会

  • 日本心理学会
  • 日本認知心理学会
  • 日本認知科学会
  • 日本基礎心理学会

主要論文・著書

  1. 齋藤洋典・白石知子(2004)介護の仕方をどう学ぶか 野島久雄・原田悦子(編著)家の中の認知科学 新曜社.
  2. 齋藤洋典・喜多壮太郎(編著)(2002)。ジェスチャー・行為・意味 共立出版.
  3. Saito, H., Yamazaki, O. & Masuda, H. (2002). The effect of number of kanji radical companions in character activation with a multi-radical-display task. Brain & Language. 81, 501-508.