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研究者総覧「情報知」

社会システム情報学専攻

氏 名
外山 勝彦(とやま かつひこ)
講座等
情報社会基盤環境論講座
職 名
教授
学 位
工学博士
研究分野
知識情報処理 / 自然言語処理 / 法情報処理

研究内容

知識情報と言語情報の統合と応用
■研究の概要■

知識情報と言語情報の利用に基づく高度情報システムの実現を目指して、知識処理、言語処理、およびそれらの融合と応用に関する研究を推進している。これまでに、例外のある知識の論理的表現・推論手法や複数知識ベースの統合モデル構築、音韻論的手法に基づく形態素解析・機械翻訳などの研究と開発を行ってきた。最近では、言語情報が持っている論理的構造や意味に、専門家が経験的に持っている知識を組み合わせることにより、人間を支援するシステムの研究・開発を行っている。特に、具体的な応用分野として、法令文書の翻訳と管理に関する情報処理を扱っている。

■研究テーマ■

(1) 法令翻訳支援

社会・経済のグローバル化、開発途上国への法整備支援などにより、わが国の法令を外国語に翻訳する必要が指摘されている。低コストで高品質な翻訳を継続的に行うためには、翻訳者を支援するシステムの実現が考えられる。特に、法令文中に出現する専門的な用語や言い回しに関する対訳辞書の構築は必要である。そこで、法令対訳コーパスから、対訳候補を自動抽出する手法を研究している。また、それに基づき、辞書登録作業を支援するシステムとして、原言語・対象言語の間の訳語の対応をKWIC(KeyWord In Context)形式で提示するBilingual KWICを開発・活用し、法令用標準対訳辞書の構築を行っている。さらに、この標準対訳辞書に基づいて、翻訳の品質検査や再翻訳が必要な箇所を抽出する手法の研究・開発も行っている。

(2) 法制執務支援

法制執務は、法令の起草、改廃など法令文書の作成・管理に関わる作業のことであり、従来は、慣習に基づいた法令文書の書式や法令文の表現に関する知識を持つ専門家が手作業によって遂行してきた。しかし、法令数は膨大であり、専門家の負担は増大している。そこで、法制執務を支援するシステムの実現を目指している。特に、条・項など法令の論理的構造を単位として実行される作業を支援するため、構造スキーマを定義し、XMLを用いて法令文書を構造化するとともに、構造化法令データベースの構築を行っている。また、法令には不遡及の原則があるため、旧法令といえども法令データベースに蓄積され、検索できる必要がある。わが国の法令改正は旧法令と改正法令から新法令を生成する統合方式によって行うため、改正法令中の改正文の解析に基づいた法令自動統合システムの開発を行っている。同時に、改正に伴う法令のバージョン管理や、法令に関連するさまざまな情報の表現と関連づけのための手法に関する研究を行っている。

(3) 多言語シソーラス構築

多言語シソーラスは、言語に関わらず類義語を容易に検索することが可能である。従来のシソーラス自動構築では、語の共起など、コーパスから得られた表層的情報から語の類似度を計算する手法が一般的であった。それに対して、格関係や前置詞を介した動詞と名詞の関係など文法的関係を介した語の共起関係から、語の潜在的意味に関する確率分布を獲得して、その間の距離を用いて語の類似度を計算する手法を研究している。

■今後の展開■

上述の要素技術の開発・研究を発展させ、翻訳の評価・採択支援、大量かつ高品質な翻訳事例に基づく機械翻訳と対訳辞書の更新など、法令翻訳に関わるすべての作業を一貫して扱う統合的な環境の構築を目指す(図)。また、日本語法令のバージョンとその翻訳のバージョンとの間の対応を取りながら、それらを一括して管理する手法の開発や、法令文書の構造を活用した法制執務支援のための作業環境、法令に関連するさまざまな法情報の国際的共有のための基盤、法令に関するシソーラスやオントロジーの構築も行い、それらを一つの環境に統合する方向へ展開させる。それにより、知識情報処理や自然言語処理の技術を応用した情報システムの活用を追究し、社会基盤の構築を目指す。
日本法令翻訳支援システム

日本法令翻訳支援システム

経歴

  • 1989年名古屋大学大学院工学研究科情報工学専攻博士後期課程満了。工学博士。1989年同大学工学部情報工学科助手。
  • 1990年中京大学情報科学部講師。1993年同助教授。
  • 1997年名古屋大学大学院工学研究科計算理工学専攻助教授。
  • 2003年同大学院情報科学研究科情報システム学専攻助教授。
  • 2013年名古屋大学情報基盤センター教授(同大学院情報科学研究科社会システム情報学専攻兼担)。

所属学会

  • 電子情報通信学会
  • 情報処理学会
  • 人工知能学会
  • 言語処理学会
  • 日本認知科学会

主要論文・著書

  1. PLSI Utilization for Automatic Thesaurus Construction, Lecture Notes in Computer Science, 3651, 334-345, Springer (2005).
  2. 日本法令翻訳システムの構想,ジュリスト,1281,2-5 (2004).
  3. 多エージェント系自己認識論理の論理プログラムへの変換,人工知能学会誌,17(2),114-126 (2002).