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研究者総覧「情報知」

情報システム学専攻

氏 名
高田 広章(たかだ ひろあき)
講座等
情報プラットフォーム論
職 名
教授 / センター長
学 位
博士(理学)
研究分野
組込みシステム / リアルタイム処理 / オペレーティングシステム

研究内容

組込みリアルタイムシステムの設計・開発技術
■研究の概要■

近年、機器に組み込まれてそれを制御するコンピュータシステムである組込みシステムの大規模化・複雑化が著しく、その設計・開発技術が大きな問題となっている。そこで、特にリアルタイム性の求められる組込みシステムの設計・開発技術に関して、ソフトウェアとハードウェアの両面から研究している。特に、次世代のリアルタイムOS技術、システムレベル設計技術、リアルタイム性解析およびスケジューリング技術を中心に、産業界での実用性を重視して研究を進めている。アプリケーション分野としては、特に自動車制御システムについて取り組んでいる。

■研究テーマ■

(1) リアルタイムOS

組込みシステム向けのリアルタイムOSとしてデファクト標準となっているITRON仕様の技術開発・標準化に取り組んできた実績をベースとして、次世代のリアルタイムOS技術の研究開発を行っている。
具体的には、マルチプロセッサシステム向けのリアルタイムOS技術、保護機能(メモリ保護および時間保護)を持ったリアルタイムOS技術、それらの技術の自動車制御システムへの適用、宇宙機などの高信頼システムへの適用などの研究を進めている。また、組込みシステム向けのコンポーネント技術についても取り組んでいる。
特にマルチプロセッサシステム向けのリアルタイムOSについては、オンチップマルチプロセッサが現実的となったことで、実用化へ向けての研究開発を強化している。組込みシステム向けに有力と考えられる機能分散マルチプロセッサに加えて、対称型のマルチプロセッサも対象としている。
なお、研究室で開発したリアルタイムOSの多くは、TOPPERSプロジェクト(http://www.toppers.jp/)よりオープンソースソフトウェアとして一般公開しており、産業界での利用事例も増えつつある。

(2) システムレベル設計

C言語レベルの記述からハードウェアを合成する動作合成技術が成熟してきたことを受けて、C言語レベルの記述から、ソフトウェア、ハードウェア、その間のインタフェースの合成を行う技術およびツール(SystemBuilder)の研究開発を進めている。SystemBuilderの基本部分はすでに完成しており、産業界での評価を実施中である。
進行中の研究として、ソフトウェアとハードウェアの間のインタフェースを、より高い抽象度で記述し、そこから状況に応じた最適なインタフェースを合成する技術が挙がられる。また、ソフトウェアとハードウェアの協調シミュレーション技術についても研究を進めている。

(3) リアルタイム性解析

自動車制御システムを主な対象として、リアルタイム性解析(ある処理が時間制限内に終わることを数学的に解析する)およびスケジューリング技術の研究開発を行っている。具体的なテーマ例としては、自動制御システム向けのネットワーク規格であるCAN(Controller Area Network)を対象に、メッセージの最悪レスポンス時間を解析する手法について研究を行った。

■今後の展開■

今後も上記の研究を継続・発展させるとともに、実用性の高い成果については、産業界への普及活動にも力を入れていく。特に自動車制御システム向けのリアルタイムOSについては、この分野の標準化活動を進めているJasPar(http://www.jaspar.jp/)へ、標準化案として提案する計画である。

また2005年度から、組込みシステムの消費エネルギー最適化技術に関する研究プロジェクトを開始した。リアルタイムOS向けの低消費エネルギースケジューリング技術は、基礎研究は数多くあるものの、実用化に至っておらず、実用化に向けての研究開発を進める計画である。
機能分散マルチプロセッサ向けリアルタイムOSにおけるオブジェクト管理の概念図

機能分散マルチプロセッサ向けリアルタイムOSにおけるオブジェクト管理の概念図

経歴

  • 1988年東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了。
  • 1989年東京大学理学部情報科学科教務職員。1993年同助手。
  • 1997年豊橋技術科学大学工学部情報工学系講師。2001年同助教授。
  • 2003年名古屋大学大学院情報科学研究科情報システム学専攻教授。現在に至る。
  • 1996年博士(理学)。

所属学会

  • 情報処理学会
  • 電子情報通信学会
  • ソフトウェア科学会
  • ACM
  • IEEE

主要論文・著書

  1. 組込みシステム開発技術の現状と展望,情報処理学会論文誌,42(4),pp. 930-938(2001).
  2. A novel approach to multiprogrammed multiprocessor synchronization for real-time kernels, Proc. of 18th IEEE Real-Time Systems Symposium, 134-143 (1997).
  3. μITRON4.0仕様(Ver. 4.00.00),トロン協会(1999).