TOP > 研究活動 > 研究者総覧「情報知」 > 複雑系科学専攻 > 創発システム論講座 > 永峰 康一郎

研究者総覧「情報知」

複雑系科学専攻

氏 名
永峰 康一郎(ながみね こういちろう)
講座等
創発システム論講座
職 名
准教授
学 位
博士(理学)
研究分野
地球化学 / 画像解析 / 地図学

研究内容

自然および人間環境に存在する各種情報の抽出と解析
■研究の概要■
自然界に存在する物質、人間社会に存在するシステムなどには、それらの起源や性質などに関する多くの情報が含まれている。本研究では様々な手法を用いて、それらの物質やシステムからまず各種データを抽出し、次に得られたデータを解析し、そして得られた結果を可視化することによって、それらの起源や性質を明らかにしていく。
■研究テーマ■
(1) 気体炭素化合物に着目した花崗岩生成環境の推定
高温高圧のマグマが地下深部で冷却固結してできた花崗岩の生成過程を具体的に知ることは容易ではない。特にマグマの酸化還元状態は派生する資源鉱物に関わる重要なパラメータであるが、これまでは主として鉱物学的手法により推定が行われてきた。本研究は花崗岩に包有されている気体炭素化合物に着目し、その組成比から岩石生成時の酸素分圧や温度を推定しようと試みるものである。
具体的には、花崗岩試料を密閉容器内で破砕し、放出された気体炭素化合物(主にメタン・エタン・一酸化炭素・二酸化炭素)をガスクロマトグラフで分析する。これらの組成が岩石生成時に熱力学的平衡にあると仮定し、理論的計算結果と分析結果とを比較することによって酸素分圧や温度を推定する。結果の一般性を追求するために、世界各地(オーストラリア、スロバキア、日本など)の花崗岩試料の分析を行っている。
(2) 岩石薄片の偏光顕微鏡画像の解析
岩石に含まれる鉱物の分布、あるいは諸性質を知る上でその薄片を偏光顕微鏡で観察することは旧来から一般的な手法である。しかしながら、光学的性質から鉱物の種類を同定し、それらの含有割合を決定することは熟練者でも手間と時間のかかる作業であった。本研究はデジタルカメラで偏光顕微鏡画像を撮影し、画像解析によって、鉱物鑑定の自動化を試みるものである。 具体的には、単ニコルおよび直交ニコルにおいて撮影角度の異なる画像を何枚かそれぞれ撮影し、薄片各部の多色性や干渉色の変化を検出することによって、そこに存在する鉱物の種類を同定し、同時に画像に含まれる各鉱物の割合を算出することを行うアルゴリズムを開発している。
(3) 地球観測衛星画像の解析
近年ランドサットなど地球観測衛星が多く打ち上げられるようになり、以前より容易に高解像度の衛星観測画像が入手できるようになった。一方、これらの画像データ解析に不可欠な地図については、従来広く用いられてきた地形図などの紙地図に加えて、最近では精密な数値地図の普及も進んでいる。本研究ではこれらの衛星画像データと数値地図とを組み合わせて、これまでより精密な土地被覆分類や変化抽出などの衛星画像解析を行っている。
(4) 日本とアメリカの住所表記システムの比較
日本とアメリカでは住所表記システムが根本的に異なり、日本では面(街区)を基本としているのに対して、アメリカでは線(通り)を基本としている。これらの違いから、特定の番地を探し当てるのはアメリカの方が容易である。これらの相違は何らかの歴史的要因に由来するのであろうが、本研究ではまず情報学的観点から、どちらのシステムが合理的であるか考察を行っている。
具体的には、日本およびアメリカで規模のほぼ等しい都市を選定し、それぞれ住所表記に必要な情報量を推定し、またそれぞれのシステムを相互に入れ換えたシミュレーションを行って、両者の合理性を様々な観点から検証している。
■今後の展開■
これまでの手法を基礎として、GIS(地図情報システム)などの新しい手法を取り入れ、収集したデータに隠された情報の抽出および解析結果の可視化を向上させる計画である。
オーストラリアの花崗岩研究(右下が本人)

オーストラリアの花崗岩研究(右下が本人)

経歴

  • 1991年名古屋大学大学院理学研究科地球科学専攻博士後期課程満了。
  • 1993年博士(理学)。
  • 1992年同大学工学部助手。
  • 1995年同大学人間情報学研究科助手。
  • 2000年同大学人間情報学研究科助教授。
  • 2003年同大学情報科学研究科助教授。現在に至る。
  • 1997年文部省在外研究員(米国アラスカ州立大学)

所属学会

  • 日本地球化学会
  • 日本地震学会
  • American Geophysical Union
  • Geochemical Society

主要論文・著書

  1. Anomalously high b-values in the south flank of Kilauea volcano, Hawaii: evidence for the distribution of magma below Kilauea's east rift zone, J. Volcanol. Geotherm. Res. (106), 23-37 (2001).
  2. Evolution of light hydrocarbon gases in subsurface processes: Constraints from chemical equilibrium, Earth Planet. Sci. Lett. (133), 151-161 (1995).
  3. Origin and coseismic behavior of mineral spring gas at Byakko, Japan, studied by automated gas chromatographic analyses, Chem. Geol. (114), 3-17 (1994).