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研究者総覧「情報知」

複雑系科学専攻

氏 名
鈴木 麗璽(すずき れいじ)
講座等
創発システム論講座
職 名
准教授
学 位
博士(学術)
研究分野
人工生命 / エージェントベースモデリング / 進化的計算手法
鈴木 麗璽

研究内容

創ってわかる創発的ダイナミクス
■研究の概要■
我々は、複雑系科学における中心的な論点の一つである、創発現象、すなわち、多数の要素から構成される系において、主体間の相互作用や時間経過に伴って新たな特徴や構造が生じる過程の解明とその応用を目指している。特に、進化に代表される生命に特徴的な創発現象に注目し、生物集団や生態系、社会といった多数の自律的な主体によって構成される系について、主体間での相互作用の本質のみを記述した人工生命モデルを構築し、計算機上で動かして創発現象を創り出すことを通して、そのダイナミクスの解明を行っている。現在は次の問いについて研究している。
■研究テーマ■
(1) 進化と学習はどのように相互作用するか?
生物には、個体レベルにおいて環境との相互作用を通して自らの形質を適応的に変化させる学習(表現型の可塑性)と、集団レベルにおいて自然淘汰によって環境に適した個体が生き残る進化という2つの異なるレベルで生じる適応プロセスがある。これらがどのように影響しあっているかは100年以上前に端を発する生物学的に重要な問題であり、特に、ラマルク的な獲得形質の遺伝の仕組みが無くても、学習により後天的に獲得されていた形質が次第に生得的な形質へと進化していく過程であるBaldwin効果は、進化的計算への応用の観点からも注目されている。
我々は、個体間相互作用による環境の動的変化に注目し、学習可能性の進化を導入した繰り返し囚人のジレンマゲームの戦略の進化実験を行っている。その結果、Baldwin効果が有効に働き、必要最小限の可塑性を用いて協調集団を維持する強力な戦略が創発すること明らかにしている。また、生物界に遍在する遺伝子間の非線形な相互作用の影響に注目し、連続値を用いたKauffmanのNK適応度地形における表現型可塑性の進化実験も行っている。その結果、一般的な解釈とは異なる3つの段階から構成される複雑なBaldwin効果や学習の役割の変移を確認している。さらに、遺伝子を同じくする個体群において、表現型の可塑性によって生じる行動の多様性が協調行動の創発にどのような影響を与えるかについても解析を行っている。
(2) ニッチ構築は進化の過程にどのように影響を与えるか?
すべての生物は、自然選択の力を受けて環境に適する方向へ進化すると同時に、その生態的な活動を通して環境条件やその状態を部分的に作り変えることで、自らもしくは他の生物種に働く選択圧を方向付けてきた。この働きはニッチ構築と呼ばれ、生物進化の過程における様々な時代や階層において重要な役割を果たしていることが明らかになっており、我々はその普遍的なメカニズムの理解を目指している。
具体的には、環境を共有する複数の種によるニッチ構築で生じる共進化に注目し、KauffmanのNKCS適応度地形に、種間のニッチ構築を介した間接的な相互作用を導入したNKESモデルを構築し、解析を行っている。その結果、遺伝的要因と環境要因との相互作用の強さに応じて、ニッチ構築は集団全体の適応度の増加に対して様々な役割を果たすことが判明している。また、集団内の個体全てに等しく影響が及ぶニッチ構築を行う形質が広まる条件についても、最小の進化モデルを構築し解析している。
(3) 協調行動と相互作用の構造はどのように共進化するか?
利己的な集団において、いかに協調的な行動が進化しうるかについて、繰り返し囚人のジレンマゲームを用いた様々な議論がなされている。我々は、個体がゲームを行う際の局所性と世代交代が生じる際の局所性が異なる場合、また、各局所性自体も進化する場合を想定した戦略の進化モデルを構築し、解析している。その結果、両者の局所性が協調行動の創発に与える影響は異なること、ゲームを行う際の局所性の変動が協調行動の創発を促進することなどが判明している。現在、進化によって生じるネットワーク構造の特徴と協調行動の関係の解析についても検討している。
■今後の展開■
これらの問いの本質についてさらに理解を深めると同時に、得られた知見の工学的応用についても検討していきたい。
各テーマにおける人工生命モデルの例・進化のイメージ

各テーマにおける人工生命モデルの例・進化のイメージ

経歴

  • 2003 名古屋大学 大学院人間情報学研究科 物質・生命情報学専攻 博士後期課程 修了。博士(学術)。
  • 2003-2007 同大学 大学院情報科学研究科 複雑系科学専攻 助手。
  • 2007-2010 同大学 大学院情報科学研究科 複雑系科学専攻 助教。
  • 2010-present 同大学 大学院情報科学研究科 複雑系科学専攻 准教授。
  • 2010-(2011) カリフォルニア大学ロサンゼルス校 生態・進化生物学科 客員研究員。

所属学会

  • 国際人工生命学会(International Society of Artificial Life)
  • 人工知能学会
  • 情報処理学会
  • 日本数理生物学会
  • 日本進化学会

主要論文・著書

  1. Reiji Suzuki and Takaya Arita: Evolution of Cooperation on Different Pairs of Interaction and Replacement Networks with Various Intensity of Selection, International Journal of Bio-inspired Computation (in press).
  2. Reiji Suzuki, Masanori Kato and Takaya Arita: Cyclic Coevolution of Cooperative Behaviors and Network Structures, Physical Review E (Selected for Virtual Journal of Biological Physics Research, Vol. 15, Issue 5, March 1, 2008), 77(2), 021911 (7 pages) (2008).
  3. Reiji Suzuki and Takaya Arita: The Dynamic Changes in Roles of Learning through the Baldwin effect, Artificial Life, 13(1), 31-43 (2007).
  4. Interactions between Learning and Evolution: Outstanding Strategy Generated by the Baldwin Effect, Biosystems, 77 (1-3), 57-71 (2004).