研究者総覧「情報知」
複雑系科学専攻
- 氏 名
- 谷村 省吾(たにむら しょうご)
- 講座等
- 多自由度システム情報論講座
- 職 名
- 教授
- 学 位
- 博士(理学)
- 研究分野
- 量子力学 / 物理学における幾何学的方法
研究内容
量子力学・情報理論・幾何学・力学系理論・統計力学
- 量子力学と情報理論:量子力学は,原子や分子などミクロの世界の物理法則を記述する理論です.量子力学は1900年頃から作られ始めて1925年頃におおよそ完成した理論体系であり,原子核や素粒子など,よりミクロの世界の物理法則を追究する方向に発展しました.また,レーザーや半導体や超伝導や量子化学など,応用科学・工学の方向にも発展しています.20世紀後半にはコンピュータと通信技術の進歩に伴って,情報というものが科学とテクノロジーの中心的なテーマとして存在感を増してきました.20世紀末頃から,量子コンピュータや量子暗号といったアイディアが提唱され,量子力学と情報科学の融合分野が注目されています.量子力学では,たんに「ものがある」とか「ものが動く」といった物理現象を扱うだけでなく,観測行為によるミクロ系の状態変化をも問題にするため,「観測者が知っている」か「知らない」かという情報のありようが問題になってきます.ここに物理学と情報科学の接点があり,新しい学問分野やテクノロジーが展開される可能性があります.私は,古典論理と量子論理の構造の違いを見極める問題や,量子力学の代数的定式化を研究しています.
- 微分幾何学と力学系:微分幾何学は,微分可能な空間,すなわち滑らかな図形を扱う数学です.一方で,力学は,ものごとが時間とともに変化するさまを記述・追跡する理論です.たいていの力学系の状態は滑らかに変化するので,微分幾何学的な方法が自然に応用できます.猫の宙返り運動や原子分子の回転・振動運動をゲージ理論という幾何学を使って調べたり,量子コンピュータの最適制御を幾何学的変分法で解くといった研究をしています.
- 熱力学・統計力学:とくに非平衡熱力学を圏論や幾何学の視点から定式化・分析することを目論んでいます.
経歴
- 1986年 愛知県立千種高等学校卒業
- 1990年 名古屋大学工学部応用物理学科卒業
- 1995年 名古屋大学大学院理学研究科物理学専攻修了, 博士(理学)取得
- 1995年 日本学術振興会特別研究員(東京大学)
- 1995-1999年 京都大学工学部助手
- 1999-2003年 京都大学大学院工学研究科講師
- 2003-2006年 大阪市立大学大学院工学研究科助教授
- 2006-2011年 京都大学大学院情報学研究科准教授
- 2011年より 名古屋大学大学院情報科学研究科教授
所属学会
- 日本物理学会
主要論文・著書
- 著書「ゼロから学ぶ数学・物理の方程式」(講談社)
- 著書「トポロジー・圏論・微分幾何―双対性の視点から」(サイエンス社)
- 解説記事「21世紀の量子論入門」:雑誌『理系への数学』(現代数学社)に連載
- S. Tanimura and T. Iwai, "Reduction of quantum systems on Riemannian manifolds with symmetry and application to molecular mechanics", Journal of Mathematical Physics, 41, 1814-1842 (2000).
- S. Tanimura, M. Nakahara, and D. Hayashi, "Exact solutions of the isoholonomic problem and the optimal control problem in holonomic quantum computation", Journal of Mathematical Physics, 46, 022101, 1-15 (2005).
- T. Isobe and S. Tanimura, "A method for systematic construction of Bell-like inequalities and a proposal of a new type of test", Progress of Theoretical Physics, 124, 191-205 (2010).
- Y. Hasegawa, K. Saitoh, N. Tanaka, S. Tanimura, M. Uchida, "Young's interference experiment with electron beams carrying orbital angular momentum", Journal of the Physical Society of Japan, 82, 033002 (2013).