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研究者総覧「情報知」

複雑系科学専攻

氏 名
大岡 昌博(おおおか まさひろ)
講座等
複雑系計算論講座
職 名
教授
学 位
工学博士
研究分野
ロボット工学 / センサ・アクチュエータ / 心理物理学
大岡 昌博

研究内容

ヒトの感覚機能の模型化とロボティクスへの応用
■はじめに■
ロボットは、多数のセンサ・アクチュエータから構成されており、それ自体が他の機械装置と比べて高度に複雑であるとともに、構成要素自体の特性だけでなく要素の相互関係も非線形となっている。このため、ロボットを構成する多種・多様なセンサ・アクチュエータ群を合理的に制御・統制して、外環境の情報収集・行動計画立案などを自律で行う上で、複雑系科学の計算論は、重要な方法論を与えるものと思われる。さらに、複雑系科学の計算論を感覚情報処理向きに発展させるために、ヒトの感覚情報処理に関する知見が活用できると期待している。
そこで当研究室では、ロボットの知能化、ロボットとヒトのコミュケーション、バーチャル・リアリティ、医療・福祉などに役立てることを目的として、ヒトの感覚情報処理機構を解明し、ロボット・メカトロニクス機器へ応用することを目指している。五感のうちとくに触覚に着目して、触覚センサに関する研究、微小アクチュエータに関する研究および触覚の心理物理学に関する研究を基本に以下の研究テーマを進めている。
1. 集合ロボットの知的協調動作に関する研究
2. ヒューマノイドロボットの手探りによる環境知覚に関する研究
3. 多指ハンドによる把握物体の認識に関する研究
4. 触覚と視覚のセンサフュージョンに関する研究
5. 触覚の仮想現実感に関する研究
以下に主な成果について紹介する。
■触覚の心理物理実験に関する研究■
ヒトの触覚情報処理の機構解明に重要となる主観的等価値や感覚閾値などの客観量を合理的に求めるために、微小段差や滑り力を任意に変化させる装置を設計製作して、それを用いて既知の刺激を被験者に与えて判定させる実験を行ってきた。その結果、とくに表面粗さの識別には機械受容単位の速受容単位I型を用いていること、能動触と受動触の間の識別精度に差がないこと、触運動の速度が大きいほど表面粗さの振幅を大きく感じていることなどを明らかにした。
■ロボット用センサに関する研究■
ロボットが滑り落とさずに物体を把持、あるいは表面の摩擦状態から材質を判定するためには滑り力を検出することが有効であるという考えに基づき、三軸触覚センサを主に開発してきた。この研究を評価されて、1998年と2002年に機械学会より関連研究に対して論文賞を贈呈された。さらに、当該研究および関連学会の活動を評価され、2004年に同学会機素潤滑設計部門より部門業績賞を贈呈された。一方で、触覚情報処理に関するソフトウェア技術に関する研究も進め、一連の研究では、人工知能技術やファジィ推論を用いた物体認識を行い、対象物体の認識結果に基づいて安定な把持方法を推論することなどが実現できた。さらに、前述のヒトに対する心理物理実験の結果から得られた知見に基づき、ヒトの触覚情報処理機構を模型化し、それをロボットに組み込み表面粗さの認識も実現した。
■ロボット用マイクロ・アクチュエータに関する研究■
開発したアクチュエータをバーチャル・リアリティ機器に適用することを目的に、前述のヒトの触覚情報処理機構に関する研究の成果に従って種々の触覚ディスプレイを開発している。最近開発した触覚ディスプレイ搭載マニピュレータ・ハンド・システムでは、操作者は一つの指について4×6の刺激ピンがある触覚ディスプレイを人差し指と親指に装着する。コンピュータ内に生成された仮想物体に触れると、指と仮想物体の接触によって生じる反力とともに、表面形状に対応して刺激ピンが押し出されるので、操作者は仮想物体を実体として感じることができる。この触覚のバーチャル・リアリティの質を向上することを主な目的として、文部科学省科研費特定領域研究438「ブレークスルーを生み出す次世代アクチュエータ研究」(平成16年~20年)の計画研究にて、マイクロ・アクチュエータアレイの開発も進めている。
■おわりに■
今後、触覚だけでなく、視覚・聴覚などへも本手法の展開を図ることによって、多種のセンサ・アクチュエータ群に関する研究へと発展させる予定である。さらに、以上の研究活動を通じて、最終的に、複雑系科学における計算論手法の開発・体系化まで行いたい。
研究テーマ間の関連図

研究テーマ間の関連図

 

経歴

  • 1986年名古屋大学大学院工学研究科機械工学専攻博士課程修了
  • 1986年株式会社富士電機総合研究所
  • 1992年名古屋大学工学部講師
  • 1993年静岡理工科大学助教授を経て
  • 2003年より名古屋大学大学院情報科学研究科助教授
  • 1998年と2002年に日本機械学会論文賞受賞
  • 2004年同学会機素設計部門業績賞を受賞

所属学会

  • 日本機械学会
  • 日本ロボット学会
  • 計測自動制御学会
  • 人間工学会
  • 電気学会

主要論文・著書

  1. Human Capability of Discriminating Relief-like 2D Figures in Tactile Displaying, Robotica, vol. 29-4, 2011
  2. Experiments on Stochastic Resonance Toward Human Mimetic Tactile Data Processing, International Journal of Social Robotics, vol.4, 2012
  3. Two-axial Piezoelectric Actuator Controller Using Multi-layer Artificial Neural Network Featuring Feedback Connection for Tactile Displays, Advanced Robotics Vol. 26 No. 3-4
  4. Flexible Active Touch Using 2.5D Display Generating Tactile and Force Sensations, Vol. 6, Issue 12, 2012