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研究者総覧「情報知」

附属組込みシステム研究センター

氏 名
山本 雅基(やまもと まさき)
講座等
職 名
特任教授 / ディレクタ
学 位
博士(情報科学)
研究分野
組込みソフトウェア / 教育評価
山本 雅基

研究内容

組込みソフトウェア技術者に対する教育手法と教育評価
研究の概要
 企業の技術者に対する教育と効果計測を如何に行うべきか? それを解き明かすために、組込みソフトウェア技術者教育を題材にして、技術項目の分類・教材開発・学習環境デザイン・教育評価・人の認知などについて、多角的な観点から研究を進める。その結果として、具体的な教育カリキュラムと教育評価手法を構築する。
 組込みソフトウェアは我が国の重要な産業であるが、技術者が数万人以上不足している実態がある。そのために、早急な人材育成が求められるので、学生だけではなく、企業に勤務する技術者に対して教育を行う必要がある。しかし、技術者は業務を行うことに忙しく、学習活動へ割く時間を十分に確保することができない。その結果、教育に対して高い投資対効果が求められるので、社会人の組込みソフトウェア技術者に対する教育コースの整備と、教育効果の計測を行う。
 本研究では、具体的な教育カリキュラムの開発を行い、さらに社会人に対して講義を行い、教育効果の計測実験を行う。近年私は、受講者の直属の上司による他者評価と、受講者自身による自己評価に関心を持っている。すなわち、両者の評価が一致するのか一致しないのか、一致しないならばどのように一致しないかに関する現象の確認とメカニズムの解明を行っている。

研究テーマ
  1. 教育カリキュラム
 育成対象者を、技術能力と管理能力の2軸を用いて、4種類の受講クラスに分ける。その上で、各クラスに所属する技術者に対する育成項目の絞込みを行う。育成項目は、ETSS(Embedded Technology Skill Standards:組込みスキル標準)に準じて管理する。複数の育成項目を教育するために、受講クラス別に複数の教育コースを整備する。社会人は、教育に使用する時間が制限されるので、短期間で教育効果を上げるためのカリキュラムの設計手法が構築されなければならない。
  1. 教育コース
 教育コースは、講義だけではなく演習を多く用意する。なぜならば、社会人技術者は、企業で実際の開発を行う能力を育成する必要があるので、講義で知識を教え込むだけでは不十分であるからである。短時間で解くことができる簡易な演習教材だけではなく、受講者に教育用プロジェクトを開発させながら彼らを指導するPBL(Project Based Learning)コースを開発する。PBLでは、企業の開発現場で必要な要求仕様書などの文書を受講者に作成させ、文書に対する指導を行うことにより、具体的な技能を育成する指導法を研究する。
 各企業における人材育成を加速するために、各企業の教育者を育成する教育コースを開発する。このコースでは、教育対象とする技術に対する高度な、あるいは幅広い理解を求める。さらに、教育コース開発の仕組み自体を体系化する。
  1. 教育評価
 社会人に対する教育の効果は、試験の点数だけで計測するのではなく、日々の業務を観察し定性的に計測されるべきである。私は、定性的な評価は、自己評価と他者評価において一致するかに関心がある。そこで、教育の前後の複数の時期において、受講者本人とその直属の上司による評価を行い、教育効果の計測とする。現在までに、上司の他者評価は、自己評価に遅れて高まることが確認されている。

今後の展開
 自己評価と他者評価の関係について検討を進め、定性的な評価の精度を高める手法を構築する。さらに、企業現場における効果的な人材育成を実現する、教育評価の活用方法を提案する。
自己評価と他者評価

自己評価と他者評価

経歴

  • 1981年 東京理科大学理工学部情報科学科卒業。
  • 2009年 名古屋大学大学院情報科学研究科博士課程(後期課程)修了・博士(情報科学)。
  • 1981年 日本電装株式会社(後の株式会社デンソー)に入社。2009年から現職。

所属学会

  • 情報処理学会
  • 日本認知科学会
  • 日本工学教育協会

主要論文・著書

  1. 組込みソフトウェア開発管理者の育成スキルを高める教育の取り組み,工学教育,60-3,56-59(2012)
  2. 社会人の業務遂行能力に対する自己評価と他者評価:両者のズレに着目した教育効果の計測,認知科学,Vol.17, No2, 257-269 (2010)
  3. Practice and Analysis of an Extension Course for Training Trainers of Embedded Software. ACM SIGBED Review, 4, 73-81 (2007).
  4. 組込みソフトウェア教育の受講者と上司による受講後の教育効果評価,工学教育,55,81-85(2007)