研究者総覧「情報知」
社会システム情報学専攻
- 氏 名
- 米山 優(よねやま まさる)
- 講座等
- 情報創造論講座
- 職 名
- 教授
- 学 位
- 博士(学術)
- 研究分野
- 情報学 / ライプニッツ研究 / モナドロジーの美学
研究内容
単子論(モナドロジー)的な考え方を出発点にした、情報に関する哲学的・美学的研究
ドイツの哲学者ライプニッツ(1646-1716)の単子論(モナドロジー)の現代的な展開可能性について研究している。
近・現代の科学がその基本線においては従ってきている原子論的な考え方は唯物論に傾斜する。それに対して、単子論は唯心論的な考え方である。原子論がすべてを物として扱うのに対して、そうではない方向を探っているわけである。世界の究極的構成要素とか、個人とか、個々の社会や文化とかいったものをどのように考えたらいいのかという話である。
そうした事柄を情報の場面で考えてみるならば、どういう構成要素を使って、どんな情報を、どんな仕方で作り出すのかという問いが立てられる。そして、そこに個人の努力や社会で認められている価値観の総体などがどのように作用するのかといった問いに関わる。それを、〈情報が生成する〉ないし〈情報を創る〉という意味での〈情報創造〉の問題として捉えて研究しているわけである。 そうした主題を具体的に展開するときのヒントとなる場面が、例えば芸術の創作過程であり、一般化すれば、発明や発想の場面である。
拙著『モナドロジーの美学』では、ライプニッツの単子論という哲学説が、美の生成・創作と密接な関わりのあることを示し、その方向での展開を、西田幾多郎の「創造的モナドロジー」やアランの〈美的なモナドロジー〉として跡づけた。
第二の拙著『情報学の基礎』では、その方向での議論を、情報工学や情報科学とは区別される情報学の問題として展開した。物質的秩序・生命的秩序・精神的秩序の各レベルでの情報創造の実際を辿る中で、さらなる展望を得ようとしたわけである。
芸術創作や発想という場面での、素材の抵抗と身体の関与は、哲学でいう心身問題を新たな形で再考する出発点をなす。しかも、こうした問題を念頭に置きつつ展開される発想法といったものが、コンピュータやそのネットワークとの関わりでどのような支援を受けうるかということも研究テーマの一つである。
こうした種々のテーマを基に、現在展開しつつあるのは、〈単子論的(monadological)で、多声的(polyphonic)な、創造的空間〉の構築と展開という哲学的・美学的試みであり、この話題は、日本独自とも言いうる「連歌・連句」の創作過程からヒントを得て、西田幾多郎の「場所の論理」をも参考にしながら、〈場所の美学〉を創っていく方向に進んでいる。
インターネットといったネットワークという全体的場と、それによってつながった各ノードである個的な要素のダイナミックな相互作用を「集合的知性」と読んだピエール・レヴィの情報の哲学のさらなる展開を目指すわけである。
近・現代の科学がその基本線においては従ってきている原子論的な考え方は唯物論に傾斜する。それに対して、単子論は唯心論的な考え方である。原子論がすべてを物として扱うのに対して、そうではない方向を探っているわけである。世界の究極的構成要素とか、個人とか、個々の社会や文化とかいったものをどのように考えたらいいのかという話である。
そうした事柄を情報の場面で考えてみるならば、どういう構成要素を使って、どんな情報を、どんな仕方で作り出すのかという問いが立てられる。そして、そこに個人の努力や社会で認められている価値観の総体などがどのように作用するのかといった問いに関わる。それを、〈情報が生成する〉ないし〈情報を創る〉という意味での〈情報創造〉の問題として捉えて研究しているわけである。 そうした主題を具体的に展開するときのヒントとなる場面が、例えば芸術の創作過程であり、一般化すれば、発明や発想の場面である。
拙著『モナドロジーの美学』では、ライプニッツの単子論という哲学説が、美の生成・創作と密接な関わりのあることを示し、その方向での展開を、西田幾多郎の「創造的モナドロジー」やアランの〈美的なモナドロジー〉として跡づけた。
第二の拙著『情報学の基礎』では、その方向での議論を、情報工学や情報科学とは区別される情報学の問題として展開した。物質的秩序・生命的秩序・精神的秩序の各レベルでの情報創造の実際を辿る中で、さらなる展望を得ようとしたわけである。
芸術創作や発想という場面での、素材の抵抗と身体の関与は、哲学でいう心身問題を新たな形で再考する出発点をなす。しかも、こうした問題を念頭に置きつつ展開される発想法といったものが、コンピュータやそのネットワークとの関わりでどのような支援を受けうるかということも研究テーマの一つである。
こうした種々のテーマを基に、現在展開しつつあるのは、〈単子論的(monadological)で、多声的(polyphonic)な、創造的空間〉の構築と展開という哲学的・美学的試みであり、この話題は、日本独自とも言いうる「連歌・連句」の創作過程からヒントを得て、西田幾多郎の「場所の論理」をも参考にしながら、〈場所の美学〉を創っていく方向に進んでいる。
インターネットといったネットワークという全体的場と、それによってつながった各ノードである個的な要素のダイナミックな相互作用を「集合的知性」と読んだピエール・レヴィの情報の哲学のさらなる展開を目指すわけである。
こうしたアプローチが文化論へと拡がった場合、multiculturalityやinterculturalityではないtransculturalityという概念が浮かび上がる。美学的な場面で、議論が始まっている概念である。こうした関連から、インターネットによる異文化交流や、容易になりつつある旅行による交流に伴って求められる〈新たなcivility〉への考察が不可欠となる。
ライブニッツが定式化した二進法を記念するメダルのデザイン
経歴
- 1981年 東京大学大学院人文科学研究科単位取得退学
- 1982年 名古屋大学教養部講師
- 1987年 名古屋大学教養部助教授
- 1999年 名古屋大学大学院人間情報学研究科教授
- 2003年 名古屋大学大学院情報科学研究科教授
所属学会
- 哲学会
- 日本哲学会
- 美学会
- 国際美学会
- イタリア美学会
- 西田哲学会
- アランの会
- 国際 Elémire Zolla 研究協会
- 日本社会情報学会
- 日本ライプニッツ協会
主要論文・著書
- Internet e le muse ― La rivoluzione digitale nella cultura umanistica (共著) ― Mimesis, Milano, 1997.
- 『モナドロジーの美学』、名古屋大学出版会、1999年.
- 『情報学の基礎 --- 諸科学を再統合する学としての哲学』、大村書店、2002年.
- 『自分で考える本』、NTT出版、2009年
- 『情報学の展開 --- 情報文化研究への視座』、昭和堂、2011年
- Il paesaggio dell'estetica --- Teorie e percorsi ---Associazione Italiana per gli Studi di Estetica, Edizioni Trauben, Torino, 1997
- Le provocazioni dell'estetica --- Dibattito a Gargnano --- Associazione Italiana per gli Studi di Estetica, Edizioni Trauben, Torino, 1999
- Frontiers of Transculturality in Contemporary Aesthetics, Torino, Trauben, 2001
- Aesthetics & Chaos --- Investigating a Creative Complicity --- (2002 International Yearbook of Aesthetics), Torino, Trauben, 2002
- Philosophes japonais contemporains, Les Presses de l'Université de Montréal, Montréal Canada,May, 2010