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研究者総覧「情報知」

社会システム情報学専攻

氏 名
秋庭 史典(あきば ふみのり)
講座等
情報創造論講座
職 名
准教授
学 位
博士(文学)
研究分野
美学と科学の恊働、人工物によるコミュニケーション誘発、身体論

研究内容

芸術作品の研究から人間の情報理解の特徴を引き出す
■研究の概要■
これまでの人文社会系学問による芸術研究の成果を生かしながら、情報社会の進展に貢献することを目指した研究を行っている。
■研究テーマ■
(1) 人文社会系研究の資産を生かすための変換作業
広告など、情報伝達を意図して作られた技術の産物(人工物)を研究することは、人間が理解しやすい情報提示のパターンを明らかにするうえで、大きな成果を挙げてきた。同じことは、文学・絵画・映画などの芸術作品の構造的研究についても言える。何から話しはじめれば聞く人を惹きつけられるのか、複数のエピソードをどのように並べれば最後まで興味を失わせずに済むのか、キャラクターをどう動かせば大きな盛り上がりが得られるのか、複数のキャラクターにどのような対話をさせれば複雑な筋立てを読者に要領よく理解させられるのか、何に注意すればお話しが自然な結末を迎えるのか…等々は、詩学、文学研究、美術研究、文化人類学、記号論、物語論、映画研究など、従来の人文社会系の学問が取り組み、成果を積み上げてきたことがらである。しかしその成果が記された文献は、他分野の研究者から見て、近寄り難い形式で書かれていることが多い。それでは、せっかくの成果や資産が台無しである。第一の研究テーマは、そうした資産を、他の研究分野の方々のご協力を仰ぎながら、より多くの人のために役立つかたちに変換していくことである。
(2) 人工物と社会の接触から生じる諸問題の研究
広告など、情報伝達を意図して作られた技術の産物(人工物)が、実際に社会に出たときには、曲解されて非難されることもあれば、予想もしなかった賞賛を浴びることもある。それが新しい技術を用いたものであればなおさらである。版画が登場したとき、印刷された書物が登場したとき、写真が登場したとき、異なる文化の異なる技術の産物が流入してきたとき…つねにそうした非難や賞賛が起こってきた。文学、絵画、映画といった、いわゆる芸術作品も、社会のさまざまな勢力との関係で、あるときは政治利用され、またあるときは投資の対象とされ、ほんらい意図していたと思われる内容からかけ離れた評価を受け、それが人々に大きな影響を与えたことがあった。その要因を明らかにしておくことは、情報伝達を意図して作られた技術の産物と深く関わる本研究科においては、きわめて重要なことがらである。主として過去の事例研究を行っている。
(3) 美学的考察
1、2の研究では、日常では使うことの少ないさまざまな概念を使用することになる。例えば、虚構、模倣、創造、キャラクター、同一性、作者、意図、影響…等々である。こうした概念のなかには、研究者のあいだでも、いまだに共通の了解が得られていないものがある。それを出来るだけ多くの人に共有可能な概念に洗練していくことも、研究テーマのひとつである。
■今後の課題■
ご協力いただけるさまざまな分野の研究者の方々との交流を深めながら第一のテーマを進めていくことが、最大の課題である。一人では無理。

経歴

  • 1993年 京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学 1993年 京都大学文学部助手
  • 1996年 島根大学法文学部助教授
  • 2000年 名古屋大学大学院人間情報学研究科助教授 2003年 名古屋大学大学院情報科学研究科助教授

所属学会

  • 美学会

主要論文・著書

  1. 芸術作品の科学的調査は作者の意図を更新することに終わるのか? 人間環境学研究,第3巻第1号,27-32(2005).
  2. How Can We Transcend Cultural Boundaries? ― Lessons from Japanese Media Artists(科研報告書,代表:岩城見一京都大学教授)5-11(2005).
  3. ヘルマン・コーヘンと美術史,近代美術史(学)におけるユダヤ人(科研報告書,代表:圀府寺司大阪大学教授),25-39(2002).