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研究者総覧「情報知」

メディア科学専攻

氏 名
平山 高嗣(ひらやま たかつぐ)
講座等

リーディング大学院担当

職 名
特任准教授
学 位
博士(工学)
研究分野
画像認識 / HCI / マルチモーダルデータ解析
平山 高嗣

研究内容

人の内部状態を顕在化する視覚的インタラクションのデザインとマイニング
人の内部状態を顕在化する視覚的インタラクションのデザインとマイニング

【目は心の窓? 口ほどにものを言う?】
 人と共生するシステムを構築することはコンピュータサイエンスにおける主要な課題の一つである.システムが人と協調的に活動するためには,人の振る舞いを外部から観測し,興味や意図などの内部状態を推定することが重要となる.「目は心の窓」と言われるように,視線はその手がかりの一つであり,19 世紀後半から心理物理学,工学分野を中心に研究されている.
 目は多くの情報を入力し,かつ内部状態を出力するインタフェースであるため,視覚情報をメディアとするヒューマンコンピュータインタラクションを設計する上で,視線は非常に重要な役割を果たせるであろう.システムは時間的に連続するデータとして視線を計測でき,人はその中に無意識的に内部状態の情報を漏らしてしまうため,コマンドやポインティングだけではない人同士のやりとりを模した自然なインタラクションを実現できる可能性がある.私は,「目は口ほどにものを言う」という諺は「目は口では言わないことをも常に言ってしまう」が正しい表現であると考えている.しかしながら,人を外から受動的に観察するだけで内部状態を推定することは困難である.


【内部状態を反映した反応を探る視覚的なインタラクションのデザイン】
では,人はどのようにして他者の内部状態を推定しているのだろうか?人同士の対話を分析すると,対話相手に積極的な働きかけを行い,例えば,その反応タイミングに注目することで,相手の内部状態を推定しやすくなることが明らかになった.この知見に基づいて提案した視覚的インタラクションモデルが「Mind Probing」である.Mind Probingは,システムが主導権を持って積極的に対話を行うプロアクティブな対話ストラテジーに基づいて,システムがユーザに視覚的な働きかけを行い,それに対するユーザの反応から内部状態を推定する.


【視覚環境,視行動,内部状態のインタラクションのマイニング】
Mind Probingが,インタラクションの参与対象が人と人,あるいは人とシステムである場合だけではなく,人と環境である場合にも適用できるモデルであると考えている.つまり,環境中の視覚刺激が人に働きかけ,それに対して人は内部状態を反映した反応を表す.多次元変数によって記述されるであろう内部状態とそれに比べれば低次元情報を持つ視線との関係は一意に定まらない.その関係を解きほぐす鍵は視覚環境のダイナミクスである.長年に渡って,視覚的注意や視行動の分析研究は,視覚環境ダイナミクスを制御することができる実験室環境において主に行われてきた.私は,その制御が困難な日常生活空間における視覚環境ダイナミクスを定量的に記述することで,特定のシーンに対して視行動を分析する仮説検証型アプローチに加え,データ駆動型アプローチによって網羅的に大量のデータから特徴的な関係を抽出することを試み,人と共生するシステムを構築するために,視覚環境,視行動,内部状態の関係の体系化を目指して研究を推進している.


【その他の研究テーマ】
・マルチモーダルデータのタイミング構造モデリング
(応用:作り笑いを見分ける顔画像認識,自動車運転者の注意散漫状態の検出など)
・大規模なデータからの特徴的なパターンの抽出
(顔の個性的な特徴の表現,事物の見方のコツやクセの分析,珍しいレシピの検索など)

経歴

  • 1998年奈良工業高等専門学校情報工学科卒業.
  • 2000年金沢大学工学部電気情報工学科卒業.
  • 2002年大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期課程修了.
  • 2005年大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了.博士(工学)
  • 2005年より京都大学大学院情報学研究科特任助教.
  • 2011年より名古屋大学大学院情報科学研究科特任助教.2012年同助教.2014 年同特任准教授.現在に至る.

所属学会

  • ACM
  • 電子情報通信学会
  • 情報処理学会
  • ヒューマンインタフェース学会

主要論文・著書

  1. Takatsugu Hirayama, Kenji Mase, Kazuya Takeda, "Analysis of Temporal Relationships between Eye Gaze and Peripheral Vehicle Behavior for Detecting Driver Distraction,International Journal of Vehicular Technology, Vol.2013, Article ID 285927, 2013
  2. Akisato Kimura, Ryo Yonetani, Takatsugu Hirayama, "Computational Models of Human Visual Attention and Their Implementations: A Survey,IEICE Transactions on Information and Systems, Vol.E96-D, No.3, pp.562-578, 2013
  3. Takatsugu Hirayama, Jean-Baptiste Dodane, Hiroaki Kawashima, Takashi Matsuyama, "Estimates of User Interest Using Timing Structures between Proactive Content-Display Updates and Eye Movements," IEICE Transactions on Information and Systems, Vol.E-93D, No.6, pp.1470-1478, 2010
  4. 平山高嗣,大西哲朗,朴惠宣,松山隆司:対話における顔向けを伴う働きかけが同意・不同意応答のタイミングに及ぼす影響,ヒューマンインタフェース学会論文誌,Vol.10, No.4, pp.1-10, 2008
  5. 平山高嗣,川嶋宏彰,西山正紘,松山隆司:表情譜:顔パーツ間のタイミング構造に基づく表情の記述,ヒューマンインタフェース学会論文誌,Vol.9,No.2,pp.201-212,2007