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研究者総覧「情報知」

社会システム情報学専攻

氏 名
大野 誠寛 (おおの ともひろ)
講座等
情報社会基盤環境論講座
職 名
助教
学 位
博士(情報科学)
研究分野
自然言語処理

研究内容

知的活動支援ための自然言語処理

■研究の概要■
文書作成や知識獲得といった人の知的活動を支援することを目的として,文書や音声などの大量の言語情報を活用した自然言語処理に関する研究を行っている.

■研究テーマ■
(1) テキスト推敲支援
日本語は,語順が比較的自由であるが,語順に関する選好がないわけではないため,文法的には間違っていないものの読みにくい文が生成されることがある.本研究では,読みやすいテキストを作成するための推敲支援技術として,より読みやすくなるように文節を並び替える手法の開発に取り組んでいる.従来手法は,事前に係り受け解析を施し,正確な構文情報が得られることを想定している.しかし,入力文が読みにくい語順である場合,係り受け解析の精度は低下する傾向にあり,その影響を受けて,語順整序の精度も低下するという問題がある.一方,本手法は,係り受け構造が付与されていない文を入力とし,係り受け解析と語順整序を同時に行う.係り受けと語順の尤度を同時に考慮することにより, 読みやすい語順を精度よく同定することができる.

(2) リアルタイム字幕生成のためのテキスト整形
リアルタイム字幕生成とは,講演や解説などの音声をテキストで提示するものであり,聴覚障害者や高齢者,外国人らによる講演音声の理解を支援するための技術である.講演では一文が長くなる傾向にあり,多くの文がスクリーン上で複数行にまたがって表示されることになるため,テキストが読みやすくなる位置に改行が挿入されている必要がある.本研究では,読みやすい字幕を生成するための要素技術として,日本語講演文への改行挿入手法を開発している.本手法は,係り受け,節境界やポーズ,行長などの情報に基づき,統計的手法によって改行位置を決定するという特徴を持つ.

(3) 音声言語アプリケーションのための構文解析
同時通訳や字幕生成などの音声言語アプリケーションにおいて,キーワードベースの処理から脱却し,より豊かな処理を実現するためには,構文情報を利用することが不可欠である.本研究では,音声言語アプリケーションの基盤技術として,話し言葉に対する構文解析技術の開発を進めている.これまでに,(a)非文法的な言語現象に対する解析の頑健性を備えた構文解析器,(b)極端に長い文に対する解析の効率性を備えた構文解析器,(c)話し手の話速に追従した解析の漸進性を備えた構文解析器を開発している.

経歴

  • 2007年7月, 名古屋大学大学院情報科学研究科 博士課程(後期課程) 修了
  • 2007年8月 - 2007年8月, 日本学術振興会特別研究員(PD)
  • 2007年9月 - 2011年10月, 名古屋大学大学院国際開発研究科 助教
  • 2011年11月 - 現在, 名古屋大学情報基盤センター 助教

所属学会

  • 電子情報通信学会
  • 情報処理学会
  • 言語処理学会

主要論文・著書

  1. Japanese Word Reordering Integrated with Dependency Parsing, In Proceedings of the 25th International Conference on Computational Linguistics (COLING2014), pp. 1186-1196, 2014.
  2. 講演のリアルタイム字幕生成のための逐次的な改行挿入,電気学会論文誌,Vol. 133-C,No. 2, pp. 418-426, 2013.
  3. 節の始境界検出に基づく独話文の係り受け解析,情報処理学会論文誌,Vol. 50,No. 2,pp. 553-562,2009.
  4. 節境界に基づく独話の漸進的係り受け解析,電子情報通信学会和文論文誌,Vol. J90-D, No. 2, pp. 556-566, 2007.
  5. Robust Dependency Parsing of Spontaneous Japanese Spoken Language, IEICE Transactions on Information and Systems, Vol. E88-D, No.3, pp. 545-552, 2005.